会社を設立する際、まずは会社形態(法人格)を選ぶ必要があります。
会社形態にはいくつか種類がありますが、中でもよく比較されるのが「株式会社」と「合同会社」です。
それぞれに特徴があり、どちらを選ぶかによって経営の柔軟性や将来的なリスク、信用度といった点で違いがあります。
とくに、複数人で起業する場合には、意思決定や利益の分配といった面で、株式会社と合同会社は大きな違いが出てくる可能性があります。
どちらの会社形態が自分のビジネスに合っているのかを理解することが重要です。
この記事では、株式会社と合同会社の違いをわかりやすく解説し、あなたが最適な選択をできるようにサポートします。
このページの目次
株式会社の概要と特徴
「株式会社」は最も有名な会社形態で、法人といえば株式会社というイメージがあるかと思います。
株式を発行することで資金を調達し、さらに事業を拡大できる会社形態であり、上場できるのは株式会社だけです。
所有と経営が分離している
株式会社の大きな特徴は「所有と経営の分離」です。
株式会社は、所有者(株主)と経営者(取締役)を分けて運営できます。
中小企業においては、自分で所有も経営もするパターンがほとんどですが、昨今のスタートアップ企業では、ベンチャーキャピタルなどから資金調達するケースも増えています。
ただし、外部の資本が入ると、株主総会で出資者の意見に耳を傾ける必要が出てきます。
また、外部の議決権の割合が高くなると、自分で経営の意思決定をできなくなったり、取締役を解任されたりといったリスクも出てきます。
そのため、経営の自由度でいえば、後述する合同会社のほうが高いといえるでしょう。
合同会社の概要と特徴
「合同会社」は、2006年に施行された会社法において設立可能となった法人の種類です。
合同会社では出資者のことを「社員」と呼びます。
また、社員の中で会社の経営に従事する人を「業務執行社員」と呼称します。
所有と経営が一致している
株式会社は所有者(株主)と経営者(取締役)が分離していますが、合同会社は所有者と経営者が一致している点が特徴です。
合同会社は、経営の意思決定をするにあたって株主総会を経る必要がなく、素早い業務推進が可能となります。
なお、意思決定の際に重要になるのが議決権です。
株式会社の議決権は、出資を多くしている人(持株数が多い人)の議決割合が高くなりますが、合同会社の議決権は、出資割合に関係なく、「社員」それぞれに1票が付与されます。
利益を自由に分配できる
合同会社では、事業で生まれた利益を原資として、社員に分配することが可能です。
利益を分配できるのは株式会社も同じですが、合同会社を構成するのは株主ではなく社員です。
合同会社では、利益の配当をどう計算するか、どのタイミングで行うかといったことを自由に決められます。
たとえば、「事業資金を準備している社員Aと、経営ノウハウを提供している社員Bに、利益を50%ずつ配当する」といったことが可能です。
株式会社と合同会社の比較
ここまでで株式会社と合同会社の概要を理解いただけたと思います。
次に、両者を比較して、それぞれのメリットとデメリットをみていきましょう。
株式会社のメリット
知名度が高い
昨今では、大企業でも合同会社という形態を選択する事例が増えており、Googleやアマゾンの日本法人でも合同会社が選択されています。
しかしながら、世の中の一定数の人は、合同会社がどういった法人かを知らなかったり、小規模の法人というイメージをもっていたりします。
株式会社のほうが知名度が高く、安定したイメージをもたれる傾向にあるので、取り引きのハードルが合同会社よりも低くなります。
資金調達しやすい
株式会社のほうが、合同会社よりも資金調達しやすいという側面があります。
新たに株式を発行することで、その資金を事業に投資できます。
合同会社では、出資=経営者となるので、第三者が出資しにくいという側面をもっています。
また、出資割合に関係なく、社員それぞれが議決権を1票もっているので、安易に出資を受け入れづらいという性質もあります。
外部からの資本調達を視野に入れるならば、株式会社のほうが圧倒的に有利であるといえるでしょう。
株式会社のデメリット
設立費用、運営費用が高い
株式会社のデメリットは、合同会社よりも設立費用が高いという点です。
会社の設立費用は、資本金の額によって変動しますが、合同会社が6万円~なのに対して、株式会社は18万円~となっています。
また、株式会社は決算公告が義務付けられています。
決算公告とは、企業の経営状態を外部に知らせるために、決算書などを官報に掲載することです。
決算内容を周知させ、不測の事態の回避や取引の安全性を確保することを目的とされています。
決算公告の対応には、一定のコストがかかってきます。
加えて、株式会社の取締役は任期が定められており、最長で10年までしか設定することができません。
そのため、自分が継続して経営する場合でも、任期が切れてしまった際に再任する必要があります。
再任したときは、そのことを登記する必要があり、その際にも登録免許税がかかってきます。
株式会社 | 合同会社 | |
定款認証費用 | 約3万円~5万円 | 不要(0円) |
登録免許税 (設立時) | 1.資本金の額 × 0.7% 2.1が15万円未満の場合は15万円 | 1.資本金の額 × 0.7% 2.1が6万円未満の場合は6万円 |
決算公告 | 官報公告 約7万4千円 | 不要(0円) |
登録免許税 (再任登記) | 1万円 | 任期の定めなし(0円) |
利益の分配方法が制限される
株式会社において、事業で生み出した利益を出資者に配当する際は、出資額に応じた割合で分配することなります。
合同会社のように定款で定め、柔軟に決めるということはできません。
合同会社のメリット
設立費用、運営費用が低い
合同会社であれば、設立費用やその後の運営にかかる費用を抑えることができます。
合同会社の設立費用は、登録免許税の最低ラインが6万円(株式会社は15万円)になりますし、定款の認証手続きがそもそも不要なので、公証役場での認証手数料がかかりません。
また、会社を設立した後も、株式会社のように決算公告の義務がなく、役員の再任手続きも不要ですので、運営にかかるコストが少ないというメリットがあります。
スピーディに意思決定できる
合同会社では、出資者が経営を行うので、外部の意見に耳を傾けることなく、経営に携わる者だけで意思決定することが可能です。
そのため、株主総会を招集する必要はなく、比較的意見を合わせやすいので、スピーディーに意思決定を行えます。
利益の分配方法を自由に決められる
合同会社において、事業で利益が出た場合には、配当というカタチで出資者(社員)に分配できます。
株式会社の利益配当は、出資割合に応じた配当金額になりますが、合同会社の場合は、出資割合ではなく、出資者ごとに決めた利益配分が可能です。
合同会社のデメリット
知名度が低い
世間における合同会社の知名度は、まだそこまで広くないとう現状があります。
そのため、取り引きのハードルは株式会社よりも高くなるでしょう。
意思決定が滞ることがある
合同会社では、意思決定しやすいというメリットの裏返しで、社員同士の意見が合わなかったときに、経営に関する意思決定が滞る場合もあります。
合同会社では、出資割合にかかわらず、社員それぞれが1票の議決権をもっています。
そのため、社員間で意見の対立が起きた際、意思決定自体ができなくなる可能性があります。
資金調達しにくい
合同会社は、出資者=経営者という特徴があるために、外部からの資金調達が制限されます。
外部からの出資を受けた場合、自分達と同等の議決権をもつこととなります。
その結果、経営の意思決定に影響が出るというリスクがあるため、外部からの出資を受け入れづらいという側面があります。
自分に合った会社形態を選ぶために
株式会社と合同会社に焦点をあて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介しました。
自分に合った会社形態を選ぶため、会社設立後の事業をシミュレーションしてみましょう。
とくに、複数人での起業を考えている方や、外部からの資本調達を想定している方にとっては、会社形態の選択が大きく影響してくる可能性があります。
しっかりと検討したうえで選択しましょう。