はじめに:会社解散・清算とは
会社を経営していると、利益が出ない、事業をやめたい、次のステップに進みたいなど、さまざまな理由で「会社を終わらせる」選択をすることがあります。そのときに必要になるのが「会社の解散」と「清算」です。
ただし、会社をたたむといっても、勝手にやめていいわけではありません。きちんと法律にもとづいて、書類を作り、登記をし、税金を計算して納める必要があります。この手続きをきちんとやらないと、あとで罰則を受けたり、追加の税金が発生したりするおそれがあります。
「解散」は、会社としての活動を終わらせる決定をすること、「清算」は、会社に残っているお金やモノ、借金などを整理することです。このふたつの手続きはセットで行います。
この記事では、解散から清算までの流れと、それぞれにかかる費用や税金、そして大事な注意点をわかりやすく解説していきます。会社をしっかり終わらせたいと考えている方にとって、手続きの道しるべとなる内容です。
このページの目次
1. 解散・清算の流れ
会社の解散と清算には、以下のような順番があります。
株主総会で解散を決議する
↓
法務局に「解散登記」と「清算人の選任登記」を出す
↓
官報に解散の公告を掲載する(債権者への通知)
↓
財産や借金の整理を行う(清算)
↓
残ったお金があれば株主に分配する
↓
最後に「清算結了登記」を行って法人を消滅させる
これらはすべて期限が決まっており、手続きに数ヶ月〜1年ほどかかることもあります。
2. 法人税・消費税の納付金額と期限
会社の解散と清算では、税金の手続きがとても大事です。法人税や消費税の申告と納付が必要になります。主に次の3つがあります。
解散事業年度の申告と納付
会社が解散した日までの期間について、法人税や消費税を申告し、納付します。期限は、解散した日から2ヶ月以内です。
清算中の申告と納付
解散から清算までに1年以上かかる場合、1年ごとに申告が必要です。これを「清算中の事業年度」と呼びます。法人税・消費税ともに、各年度が終わってから2ヶ月以内に申告します。
残余財産確定後の申告と納付
清算の最後に、残ったお金や財産を株主に分けるときにも申告が必要です。
これを「残余財産確定事業年度」と言い、この日の翌日から1ヶ月以内に法人税などを申告します。
これらの申告を忘れたり、遅れたりすると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されるので注意しましょう。
税額は会社の利益によって異なりますが、法人税の実効税率は約23%、消費税も通常通り課税されます(免税条件を満たしていない限り)。
3. 登記申請にかかる費用
登記とは、法務局に対して「会社の状態が変わった」ことを記録する手続きです。解散・清算のときには以下の登記が必要で、それぞれに費用がかかります。
手続きの内容 | 費用(登録免許税) |
---|---|
解散登記 | 30,000円 |
清算人の選任登記 | 9,000円 |
清算結了登記 | 2,000円 |
また、官報に公告を出す費用として、約32,000円がかかります。
登記手続きは自分でもできますが、間違いを防ぐために司法書士に依頼する人も多いです。依頼する場合は、手数料として5万〜10万円程度かかります。
4. 専門家に依頼する場合の費用相場
手続きが不安な方は、税理士や司法書士などの専門家に相談することもできます。主な費用の目安は以下の通りです。
- 税理士報酬:5〜10万円(税務申告書の作成・提出)
- 司法書士報酬:5〜10万円(登記書類の作成・提出)
- 官報公告費用:約3万円(別途必要)
すべて合わせると、15〜25万円程度が一般的な総費用です。
5. 手続き上の注意点
会社の解散・清算には多くの注意点があります。
- 申告・登記の期限を守ること
遅れると追加で税金がかかります。 - 清算人の業務をしっかり行うこと
資産や債務の処理をきちんと行わないと、後でトラブルになります。 - 残余財産分配時の課税に注意
「みなし配当」として課税される場合があります。 - 複数の役所への届出が必要
税務署・都道府県税事務所・市区町村などに、それぞれ届け出が必要です。 - 専門家に相談する余裕を持つこと
疑問や不安があるときは、早めにプロに相談しましょう。
6. まとめ
会社の解散と清算は、一つひとつの手続きを正確に行うことが大切です。税金や登記の期限を守ること、必要な費用をあらかじめ把握しておくことが成功のカギになります。
「会社をたたむ」というのは、単なる終わりではなく、次のスタートのための準備でもあります。トラブルなく会社を終わらせるために、この記事の内容をぜひ参考にしてください。