青色申告は、法人が節税効果を最大限に活用し、経営を安定させるための重要な制度です。
本記事では、法人が青色申告を選択することで得られる4つのメリットについて紹介します。
また、青色申告を行うための要件や申請方法についてもわかりやすく解説します。
適切な手続きを行い、事業運営をより効果的に進めるための参考にしてください。

青色申告で得られる4つのメリットとは?

法人を設立すると、決算期ごとに税務署へ確定申告を行う必要があります。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、メリットの多い青色申告が一般的に推奨されています。
ここでは、青色申告の主なメリット4つについて詳しくご紹介します。

1.欠損金の繰越控除

青色申告の1つ目のメリットは、「欠損金の繰越控除」を利用できる点です。
これは、法人が赤字(欠損金)を計上した場合、その赤字を翌年度以降の利益(所得)と相殺できる仕組みです。
たとえば、赤字を出した翌年度に大きな利益が出た場合、欠損金を活用することで課税対象となる所得を減らし、結果的に税負担を軽減することが可能です。

また、青色申告を行っている法人は、事業年度開始の日前10年以内に発生した欠損金を、後の事業年度の所得と相殺することが認められています(平成30年4月1日以前に開始した事業年度で発生した欠損金の繰越期間は9年)。
この制度を活用すれば、税金の支払いを調整しやすくなり、法人の資金運用を中長期的に安定させることができます。

国税庁:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

2.欠損金の繰り戻し還付

青色申告の2つ目のメリットは、「欠損金の繰り戻し還付」が利用できる点です。
これは、法人が赤字を計上した際に、その赤字を前期の利益(所得)と相殺し、過去に支払った法人税の一部を還付してもらえる仕組みです。

たとえば、前期に事業が好調で大きな利益を上げ、相応の法人税を納めていたとします。
その後、当期に業績が悪化して赤字が発生した場合、繰り戻し還付の制度を利用することで、前期の利益と赤字を相殺し、前期に支払った法人税の一部が還付される可能性があります。

この仕組みは、赤字が発生した際にも資金を確保しやすくし、キャッシュフローの改善や経営の安定化に大きく寄与します。
とくに、業績が不安定な企業にとっては重要なサポートとなるでしょう。

3.少額減価償却資産

青色申告の3つ目のメリットは、「少額減価償却資産の特例」を活用できる点です。
通常、10万円以上の資産を取得した場合、税務上の耐用年数に基づいて費用を分割して計上する「減価償却」を行う必要があります。
しかし、この特例を利用すれば、一定の条件を満たした資産について、購入した年度に一括で経費として計上することが可能になります。

具体的には、取得価格が10万円以上30万円未満の資産を「少額減価償却資産」として扱うことで、年間合計300万円までを一括経費化することが認められています。
この仕組みにより、資産取得時の費用を即座に経費化できるため、法人税の負担を早期に軽減することが可能です。
また、資金繰りの改善にもつながり、特に中小企業にとって有効な節税対策となります。

4.税額控除制度

青色申告の4つ目のメリットは、「税額控除制度」を活用できる点です。
税制で規定された条件を満たす場合、法人税の負担を軽減することが可能です。

たとえば、「中小企業投資促進税制」は、指定された設備や資産を取得し、それを対象業種で利用した場合に適用されます。
この制度を利用すれば、取得した資産に応じて税額控除を受けることができ、設備投資に伴う初期費用の負担を軽減できます。

また、「賃上げ促進税制」は、前期と比較して賃金総額が一定以上増加した場合に適用される制度です。
従業員の給与を引き上げた法人は、その増加額に応じて税額控除を受けることができます。
この制度は、賃上げによる法人税の負担を軽減しながら、従業員の待遇改善を支援するものです。

これらの税額控除制度を活用することで、設備投資や人件費増加に伴う税負担を抑えつつ、事業の成長や従業員のモチベーション向上を図ることができます。
青色申告を採用することで、これらの制度の恩恵を受けやすくなり、長期的な経営の安定化に寄与するでしょう。

青色申告をしないとどうなる?デメリットを解説

青色申告を行わない場合、前述したさまざまなメリットを享受することができなくなります。
青色申告の要件を満たす必要がなくなるため、「事務作業が軽減されるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、実際には白色申告法人であっても、申告時には青色申告と同等の書類作成が求められるため、事務的な負担が軽くなるわけではありません。

青色申告を選ばないことで得られる利点はほとんどなく、税務上の優遇措置を受けられない分だけデメリットが大きくなる可能性が高いと言えるでしょう。
青色申告は、手間以上に得られる効果が大きいため、積極的に活用することをおすすめします。

青色申告を行うための要件

青色申告を行うためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

事前に届出を提出する

青色申告を希望する法人は、所定の申請書を税務署に提出する必要があります。
この手続き自体は非常にシンプルで、必要な書類を期限内に提出するだけで済みます。
ただし、手続きのタイミングを逃してしまうと、その年度には青色申告が適用されないため、事前にスケジュールを確認しておくことが重要です。

複式簿記による帳簿を記録する

複式簿記は、単式簿記よりも記録方法が複雑で、初めて帳簿をつける方にはややハードルが高いと感じられるかもしれません。
取引ごとに「借方」と「貸方」の仕訳が必要となり、正確な管理が求められるため、簿記の基本知識が必要です。
しかし、近年では会計ソフトが普及しており、それらを活用することで複雑な処理を簡素化できるようになっています。
また、会計事務所や税理士のアドバイスを受けながら記帳を行えば、さらに効率よく正確な帳簿を作成することが可能です。

青色申告の申請手順と注意点

青色申告を希望する場合には、「青色申告の承認申請書」という書類を、法人の所在地を管轄する税務署に提出する必要があります。
申請書の提出期限は、原則、青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日までとなります。
なお、一部例外的に認められているものとして、設立の日の属する事業年度であれば、法人設立の日から3カ月以内またはその事業年度の終了日までのうち、いずれか早い日の前日までと定められています。
その他、例外的に認められている場合もありますので、詳しくは税理士へご相談ください。
期限を守らない場合、青色申告の適用を受けることができず、節税などのメリットを享受することができなくなります。
そのため、設立後は速やかに手続きを進めることが非常に重要です。

「青色申告の承認申請書」のフォーマットは税務署で取得できるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることも可能です。

国税庁:青色申告書の承認の申請
※書類は国税庁のページより取得できます

青色申告を活用して経営を安定化させよう

青色申告は、法人が税制上のさまざまな優遇措置を受けるための非常に有効な手段です。
欠損金の繰越控除や繰り戻し還付、少額減価償却資産の特例、さらには税額控除制度など、経営に役立つメリットが数多くあります。
また、税負担を軽減しつつキャッシュフローを改善することができるため、経営の安定化にも大きく寄与します。

一方で、青色申告を行わない場合、これらのメリットを享受することができません。
白色申告法人であっても同等の事務負担が求められるため、特にメリットのない選択肢と言えるでしょう。

青色申告を始めるには、事前に「青色申告の承認申請書」を税務署に提出し、複式簿記で正確な帳簿を記録する必要があります。
初めて取り組む方には少々複雑に感じるかもしれませんが、近年では会計ソフトの活用や専門家のサポートにより、手続きや記帳作業は以前より簡素化されています。

法人として効率的かつ安定した経営を目指すのであれば、青色申告は欠かせない選択肢です。
制度の活用により、節税対策を講じながら事業運営をより効果的に進めることができます。
適切な準備を行い、青色申告のメリットを最大限に活用しましょう。