個人事業主の方であれば、一度は法人化を検討したことがあるかもしれません。
適切なタイミングで法人化を選択することで、事業運営の効率化や税制面でのメリット、さらには社会的信用の向上などが期待できます。
当記事では、個人事業主が法人化を検討すべきタイミングを3つ紹介します。
法人化の判断をする基準やポイントを押さえ、事業運営に役立ててください。
1.事業所得が900万円を超えたとき
個人事業主が法人化を検討すべきタイミングの1つ目は、「事業所得が900万円を超えたとき」です。
個人事業主としての所得が年間900万円を超えると、所得税の負担が大幅に増えます。
日本の所得税制度は累進課税を採用しており、所得が増えるほど税率も上昇するからです。
たとえば、900万円以上の所得には税率33%が適用され、さらに1,800万円を超える所得には税率40%が適用されます。
一方、法人の法人税は比例税率が適用され、利益が増えるほど税額が上昇しますが、初年度は所得金額800万円まで税率15%、それを超える部分は税率23.2%となります。
この差は事業規模が大きくなるほど顕著になり、法人化による節税効果が期待できます。
たとえば、年間所得が1,200万円を超える場合、法人化による税負担の軽減が数十万円単位になることがあります。
また、法人化すれば役員報酬として所得を分散でき、節税にもつながります。
たとえば、配偶者や家族に給与を支払う形で所得を分散することで、所得税率を低く抑えることが可能です。
所得税率 | ||
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所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
法人税率 ※資本金一億円以下の場合 | |
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所得金額 | 税率 |
8,000,000円 以下 | 15% |
8,000,000円 超 | 23.20% |
2.社会保険の加入が必要になったとき
個人事業主が法人化を検討すべきタイミングの2つ目は、「社会保険の加入が必要になったとき」です。
従業員を雇う場合や福利厚生を充実させたい場合には、法人化を検討してみましょう。
法人化することで社会保険に加入でき、従業員に対して安定した労働環境を提供できます。
これは優秀な人材を確保するための重要な要素であり、企業の成長に寄与します。
また、規模が大きな企業や公的機関との取引においては、法人であることや社会保険に加入していることが必須条件となる場合があります。
なお、法人化することで、個人事業主として支払っていた国民健康保険や国民年金から、社会保険に切り替わります。
これにより、事業主自身の老後の保障が手厚くなりますので、長期的な生活の安定や老後の準備につながるというメリットもあります。
3.事業拡大や資金調達を検討しているとき
個人事業主が法人化を検討すべきタイミングの3つ目は、「事業拡大や資金調達を検討しているとき」です。
事業拡大や資金調達を計画している場合、法人化は非常に有効な手段となります。
なぜなら、法人化することで、取引先や金融機関からの信用度が向上し、大規模な取引や融資の交渉がスムーズに進むようになるからです。
たとえば、法人名義の契約や請求書は、個人事業主のそれよりも信頼性が高いと見なされることが多く、とくに大手企業や公的機関との取引では必須条件になる場合があります。
また、法人化することで、決算書や財務内容を明確に提示できるため、金融機関からの評価が高まり、融資の承認率が上がる可能性があります。
さらに、法人を対象とした補助金や助成金を活用できるというメリットもあります。
新規事業開発を支援する補助金や、地域振興を目的とした助成金などを活用すれば、資金調達の手段を増やすことができます。
まとめ
以上、個人事業主が法人化を検討すべきタイミングとして、「事業所得が一定水準を超えたとき」「社会保険の加入が必要になったとき」「事業拡大や資金調達を検討しているとき」の3つを紹介しました。
これらのタイミングに法人化することで、さまざまなメリットが期待できます。
ただし、法人化に伴う手間やコストも発生するため、法人化した後の損益やキャッシュフローのシミュレーションも行った上で慎重に検討しましょう。