会社を設立しようとするとき、「何をする会社か?」をきちんと決める必要があります。これは、単に事業の方向性を考えるだけでなく、「定款(ていかん)」という書類に明確に書いておかなければならない、大切なステップです。定款に記載する「事業目的」は、会社がどんなビジネスを行うのかを法的に示すもので、会社の土台となる要素のひとつです。

この事業目的は、役所への申請や、銀行からの融資、他社との取引、将来的な新事業の展開など、いろいろな場面で重要な意味を持ちます。たとえば、定款に書かれていない事業は原則として行えず、もし新しい事業を始めたい場合は、定款を変更しなければなりません。

だからこそ、最初から「正確に」「将来を見すえた形で」事業目的を決めることがとても大切です。この記事では、会社の事業目的の決め方や定款に書くときの注意点、具体的な書き方の例などを、わかりやすく解説していきます。

事業目的とは?

「事業目的」とは、会社が行うビジネスの内容を定款に書いたものです。これは会社法という法律でも「必ず書かなければならない」と決められており、会社の“活動範囲”を決める役割を持っています。

たとえば、「アパレル商品の企画・製造・販売」と書かれていれば、その内容に関わるビジネスは自由に行えますが、「カフェ経営」など全く違う事業をしたい場合は、定款の変更が必要になります。

事業目的を決めるときの3つのポイント

2-1.適法性と明確性があること

法律に違反するような内容はもちろんNGです。たとえば「違法薬物の販売」などは当然ダメです。また、誰が読んでも意味がわかるように、わかりやすく具体的に書く必要があります。

2-2. 営利性があること

会社は利益を上げることを目的としています。だから、「寄付の受付」など、利益を目的としない内容だけを書いてしまうと、法務局に受理されない可能性があります。

2-3. 将来の展開も考えること

今はまだ始めていなくても、将来的にやりたい事業があるなら、最初から事業目的に含めておくのが賢い方法です。そうすれば、あとから定款変更の手続きをしなくてもよくなります。

定款に書くときの注意点

1.専門用語や英語はできるだけ避ける
誰が読んでも意味が通じるように、日本語でわかりやすく書くのが基本です。たとえば「D2C商品」ではなく「自社開発商品の通信販売」などと書きましょう。

2.「附帯する一切の業務」という文言を入れる
事業目的の最後に「上記に附帯する一切の業務」などと入れておくと、関連する業務もカバーできて安心です。

3.許認可が必要な業種には注意
たとえば「古物商」「建設業」「飲食店」などは、行政からの許可が必要です。その場合、定款に事業内容が正しく書かれていないと、許可を取ることができません。

事業目的の記載例(業種別)

以下のような具体例を参考にしてみましょう。

【IT企業の例】  
  -ソフトウェアの企画・開発・販売
  - Webサイトの制作・運営
  - ITコンサルティング業務
  - 上記に附帯する一切の業務

【飲食業の例】
  - 飲食店の経営
  - 食料品・飲料品の販売
  - フランチャイズ事業の展開
  - 上記に附帯する一切の業務

【物販系ビジネスの例】
  - アパレル製品の企画・製造・販売
  - インターネットを利用した通信販売業
  - 輸出入業
  - 上記に附帯する一切の業務

まとめ

事業目的は、会社の“名刺”のようなものです。どんなことをする会社なのか、外部に向けてわかりやすく伝えるためにも、しっかりと考えて書くことが重要です。

ポイントは以下の通りです。

・法律に反していないか?
・利益を目的としているか?
・将来やりたい事業も含めているか?
・わかりやすい言葉で書かれているか?
・必要に応じて「附帯業務」の文言を加えているか?

これらを意識しておけば、定款を作成する際に迷うことが少なくなり、あとあともスムーズに事業を展開できるはずです。ぜひ、自社の事業目的をじっくりと考えてみてください。