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はじめに|そもそも「決算月」とは?
「決算月」とは、法人が1年間の経営活動の結果をまとめる月のことを指します。
決算では、売上や経費、利益などを計算し、財務諸表(損益計算書・貸借対照表など)を作成します。
この決算書をもとに、法人税や消費税などの申告・納付を行うため、会社運営の大きな区切りといえます。
会社を設立する際には、定款や登記の中で「事業年度(=決算期)」を設定します。
決算月の決め方は自由?変更はできる?
決算月は、原則として会社設立時に自由に決めることが可能です。
3月や12月などに合わせる必要はなく、自社の事情に応じて、例えば「5月決算」「10月決算」などでも問題ありません。また、一度決めた決算月は、あとから変更することも可能です。その場合は、株主総会の決議と所定の手続き(税務署等への届出)が必要になります。
決算月を選ぶ際の3つの視点
3-1. 実務上の観点:業務効率を考慮する
決算作業は想像以上に業務量が多く、経理担当者や経営者の負担が集中します。
- 会計データの整理
- 各種資料の作成
- 税理士とのやり取り
- 法人税・消費税などの申告対応
これらは、通常の業務に加えて行う必要があるため、繁忙期と重なると非常に大変です。
▼ 業種別・おすすめの決算月
- 飲食業:年末~年度末(12〜3月)が繁忙期のため、避けた方が無難。→ 5月~9月あたりがおすすめ。
- 建設業:公共事業などの関係で3月・9月が繁忙期。→ 4月や10月など閑散期が適切。
- 医療・福祉業:介護報酬改定(4月)前後は多忙なので、夏や冬に設定するのも選択肢。
繁忙期を避けて、余裕のある時期に決算月を置くことが、スムーズな決算処理に繋がります。
3-2. 税務上の観点:節税や資金繰りへの影響
決算月をうまく活用することで、納税タイミングや資金繰りに影響を与えることがあります。
▼ 節税戦略としての決算月
- 決算期前に経費や投資を調整して、利益(課税所得)を抑えることが可能。
- 設立1期目は、事業年度を最大13か月に設定可能。
→ これを活かせば、売上が少ない期間を長くカバーし、消費税の免税期間を最大限活用できます。
▼ 資金繰りを重視するなら
- 売上入金の直後に決算を設定することで、納税資金が手元にある状態で支払い可能。
- 反対に、ボーナスや大型支出の直後は資金繰りが苦しくなるため、避けたほうがよいでしょう。
3-3. 経営上の観点:事業サイクルとの整合性
自社の事業サイクルに合った月を選ぶことは、経営分析や予算管理の効率を高めます。
▼ 事業内容別・決算月の工夫
- 教育関連事業:学校の年度末に合わせて3月決算にすると、計画・予算立案との連動がスムーズ。
- 小売業・EC:12月の年末商戦で売上が大きく動くため、翌月の1月決算で年度をキレイに締められる。
- 季節商品を扱う業種:シーズン終了直後の月に決算を設定することで、販売実績と連動しやすい。
こうしたサイクルに合わせることで、経営判断のスピードや正確性が高まるメリットがあります。
4. 実際によく選ばれる決算月とその理由
決算月 | 理由・特徴 |
3月 | 公共機関・大企業の年度末と揃うため、取引上スムーズ |
12月 | 暦年ベースで管理しやすい。個人事業と合わせる人も多い |
6月・9月 | 会計事務所の繁忙期を外せるため、サポートが手厚い |
1月 | 年末商戦の成果が反映でき、経営分析しやすい |
5. 設立時におすすめの決算月戦略
法人設立時には、決算月の戦略的な設定で、次のようなメリットを得られます。
- 免税期間を延ばす(消費税の納税を最大2年先にできる)
- 最初の決算作業までの期間を確保し、余裕を持って準備できる
- 会計事務所のサポートが得られやすい時期を選ぶ
特に、創業時は資金繰り・経理体制・帳簿の整備など課題が多いため、計画的に設計しておきましょう。
6. 決算月の変更手続きについて
すでに設定した決算月を変更したい場合は、以下の手続きが必要です。
決算月の変更の流れ
- 株主総会での決議(定款変更)
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村へ異動届を提出
- 法務局への登記は原則不要(ただし登記事項に記載した場合は必要)
税理士と連携し、次の申告スケジュールに支障がないよう調整することが大切です。
7. まとめ|自社に最適な決算月を選ぼう
法人の決算月は、単なる「1年の締め月」ではなく、実務・税務・経営のすべてに大きく影響する重要な要素です。
決算月を決めるポイントまとめ
優先事項 | 決算月の選び方 |
実務負担を減らしたい | 繁忙期を避ける |
節税・資金繰り重視 | 売上入金後など資金が潤沢な時期 |
経営判断を最適化したい | 自社の事業サイクルに合わせる |
会社の成長フェーズや事業内容によって、ベストな決算月は異なります。
焦って決めずに、自社にとって最も合理的かつ戦略的なタイミングを見極めましょう。