「会社を設立したいけれど、事業目的の書き方が分からない…」「定款にどう書けば、将来の事業展開にも対応できるのだろう?」
会社設立における「事業目的」は、会社の活動範囲を定める非常に重要な項目です。この記載一つで、融資審査に影響したり、許認可の取得がスムーズになったり、逆に事業の成長を妨げたりする可能性があります。
この記事では、会社設立における事業目的の正しい書き方、具体的な例文、注意点やポイントを分かりやすく解説します。 この記事を読めば、ビジネスの可能性を最大限に引き出す事業目的を設定し、自信を持って会社設立を進められるでしょう。
このページの目次
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会社設立における事業目的の重要性
会社設立を検討されている方にとって、定款に記載する「事業目的」は、単なる形式的な項目だと捉えられがちです。しかし、この事業目的の記載は、会社の将来を左右するほど非常に重要な意味を持っています。
事業目的は、会社がどのような事業活動を行うのかを明確にし、会社の活動範囲を法的に定めるものです。この記載が適切でない場合、以下のような様々なリスクが生じる可能性があります。
- 融資の審査に影響する: 金融機関は、会社の事業計画や将来性を判断する際に、事業目的を重視します。曖昧な目的や、計画と乖離した目的は、融資の判断に悪影響を及ぼすことがあります。
- 許認可が取得できない: 事業内容によっては、特定の許認可が必要になります。例えば、建設業や飲食業などです。事業目的に必要な事業が明記されていないと、許認可の申請ができない、または承認されない可能性があります。
- 事業の拡大を阻害する: 将来、新たな事業を展開しようとした際、現在の事業目的にその内容が含まれていないと、目的外行為とみなされる恐れがあります。 その場合、事業目的の変更手続きが必要になり、時間や費用がかかるだけでなく、ビジネスチャンスを逃すことにもつながりかねません。
- 社会的な信用に関わる: 取引先や顧客、株主などは、会社の事業目的を通じて、その会社の信頼性や専門性を判断します。 不明確な事業目的は、社会的な信用を損なう原因となることもあります。
このように、事業目的は会社の活動の根幹をなし、法務、税務、金融、経営戦略といった多岐にわたる側面で影響を及ぼします。そのため、会社設立時には、現在の事業だけでなく、将来的な展望も踏まえて慎重に設定することが不可欠です。
事業目的とは?定義と役割を理解しよう
会社設立時に必ず定める「事業目的」とは、会社がどのような事業活動を行うのかを具体的に示すものです。これは会社の活動範囲を明確にするだけでなく、社会に対して会社の存在意義を表明する重要な役割を担っています。
事業目的は、会社の根本規則である「定款」に記載され、法務局での設立登記の際に登記簿謄本にも記載されます。
事業目的の主な役割は以下の通りです。
- 会社の活動範囲の明確化: 会社が合法的に行える事業を特定し、無秩序な事業展開を防ぎます。
- 取引先・金融機関への信用供与: どのような事業を行う会社なのかを示すことで、取引先や金融機関が安心して取引や融資の判断を行えるようになります。
- 許認可の取得要件: 特定の事業を行うためには、許認可が必要となる場合があります。事業目的にその事業が明記されていることが、許認可取得の前提となります。
- 株主・債権者保護: 会社の事業内容を明確にすることで、株主や債権者が投資や取引の判断を適切に行えるように保護します。
このように、事業目的は単なる形式的な記載事項ではなく、会社の信用、事業の展開、法的な側面において極めて重要な意味を持つものです。そのため、将来を見据えた適切な内容を慎重に検討し、記載することが求められます。
会社設立時の事業目的の正しい書き方
会社設立において、事業目的の記載は会社の将来を左右する重要なプロセスです。ここでは、具体的な例文を通して、各業界における事業目的の書き方を紹介します。
具体的な事業目的の例文集
事業目的は、会社の事業内容を明確にし、将来的な展開も視野に入れて記載することが重要です。ここでは、主要な業界ごとの具体的な例文をご紹介します。
IT・Webサービス関連
IT・Webサービス業界は変化が速いため、汎用性を持たせつつ、具体的な事業内容を網羅することが大切です。
- インターネットを利用した各種情報提供サービス業
- ウェブサイト、ウェブコンテンツ及びウェブシステムの企画、制作、開発、運営及び管理
- コンピュータソフトウェアの企画、開発、制作、販売、賃貸、保守及び管理
- 情報システムの設計、開発、運用、保守及びコンサルティング
- インターネット広告事業及び広告代理業
- 各種デジタルコンテンツの企画、制作、販売及び配信
飲食・小売関連
飲食・小売業では、提供するサービスや商品の種類、販売チャネルの多様性を考慮して記載します。
- 飲食店、喫茶店の経営
- テイクアウト、デリバリーサービス事業
- 食料品、酒類、日用雑貨の販売及び輸出入
- 菓子、パン、惣菜の製造及び販売
- 通信販売業及びインターネットを利用した商品の販売
- 飲食店の経営に関するコンサルティング
コンサルティング・士業関連
コンサルティングや士業関連の事業目的は、専門性を明確にしつつ、関連する支援業務もカバーできるように記載します。
- 経営コンサルティング業務
- マーケティングリサーチ及びコンコンサルティング
- 企業研修、セミナーの企画、開催及び運営
- M&Aに関するコンサルティング及びアドバイザリー業務
- 事業承継に関するコンサルティング
- 知的財産権に関するコンサルティング及び支援業務
製造・販売関連
製造・販売業では、製造する製品の種類、販売方法、原材料の調達なども含めて記載すると良いでしょう。
- 各種機械器具、部品の製造、加工、販売及び輸出入
- 衣料品、服飾雑貨の企画、製造、販売及び輸出入
- 健康食品、化粧品の製造、販売及び輸出入
- 電気機械器具、電子部品の製造、販売及び修理
- 前各号に付帯関連する一切の事業
事業目的記載のNG例と注意点
事業目的を記載する際には、いくつか注意すべき点があります。不適切な記載は、登記が却下されたり、将来的な事業展開の足かせになったりする可能性があるため、十分に気をつけましょう。
①抽象的すぎる表現 「その他一切の事業」のような漠然とした表現は、具体的な事業内容が不明確であるため、原則として認められません。また、「コンサルティング」だけでは、何に関するコンサルティングか不明確で不十分とされることがあります。
- NG例: 「コンサルティング業」「その他一切の事業」
- OK例: 「経営戦略に関するコンサルティング業務」「情報システム導入に関するコンサルティング業務」
②違法性や公序良俗に反する内容 当然ながら、違法な事業や社会の秩序・善良な風俗に反する事業目的は認められません。
- NG例: 「賭博施設の経営」「詐欺行為の助長に関する事業」
③営利性が認められない内容 会社法上の会社は営利を目的とするため、ボランティア活動など、営利性が明確でない事業を単独で目的とすることはできません。ただし、営利事業に付随する社会貢献活動であれば問題ありません。
④記載漏れ 将来的に予定している事業や、許認可が必要な事業(例:建設業、宅建業、古物商など)について、事業目的に記載がないと、後から追加変更の手続きが必要になります。これは時間と費用がかかるため、設立時に可能な限り網羅しておくことが重要です。
これらの注意点を踏まえ、具体的かつ将来性を見据えた事業目的を記載することが、会社設立をスムーズに進めるための鍵となります。不明な点があれば、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

事業目的設定の3つのポイント
会社設立時の事業目的は、単に現在の事業内容を記すだけでなく、将来的な展望や法的な要件を考慮して設定することが極めて重要です。ここでは、後悔しない事業目的を設定するための3つのポイントを解説します。
1. 網羅性:将来の事業展開を見据える
事業目的を設定する際は、現在行っている事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある関連事業や新規事業もカバーできるように、ある程度広めに記載することが重要です。例えば、「ITコンサルティング業」だけでなく、「ウェブサイトの企画、制作、運営及び管理」や「各種情報の収集、分析、管理及び提供」といった関連性の高い事業も盛り込んでおくことで、将来的な事業拡大の際に定款変更の手間や費用を省くことができます。
ただし、あまりにも広範すぎると、会社の事業内容が不明確になり、金融機関からの融資審査や許認可の取得に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、事業目的が多すぎると、登記費用が高くなるケースもあるため、現実的な範囲で網羅性を持たせることが重要です。
2. 具体性:曖昧すぎず、明確に
事業目的の記載は、第三者が会社の事業内容を明確に理解できるよう、具体的な表現を用いることが求められます。例えば、「その他一切の事業」のような抽象的すぎる表現は認められません。また、「コンサルティング業」とだけ記載するよりも、「経営コンサルティング業」「ITコンサルティング業」のように具体的に示す方が、事業内容が明確になります。
登記官は、記載された事業目的からその事業が適法かつ具体的に行われるものと判断します。金融機関も融資の際に事業目的から事業内容の健全性や将来性を判断するため、誰が読んでも誤解なく事業内容が伝わるレベルの具体性が不可欠です。
3. 許認可・資格:事業に必要なものを考慮する
特定の事業を行うためには、国や地方公共団体からの許認可や登録、届出が必要となる場合があります。例えば、建設業を営むには「建設業許可」、宅地建物取引業には「宅建業免許」、飲食店を営業するには「飲食店営業許可」が必要です。これらの許認可を取得するためには、会社の事業目的の中に、該当する事業内容が明記されている必要があります。
必要な事業目的の記載がないまま許認可申請を行うと、申請が却下されたり、事業目的の追加・変更手続きを求められたりして、事業開始が遅れる原因となります。 そのため、会社設立前に、予定している事業に必要な許認可の有無を確認し、それらをカバーする事業目的を漏れなく記載することが非常に重要です。
事業目的と定款・登記申請の関係
会社設立において、事業目的は定款に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」の一つであり、登記申請にも深く関わってきます。ここでは、定款と登記申請における事業目的の具体的な位置づけと、それぞれで注意すべき点について解説します。
定款における事業目的
定款とは、会社の根本規則を定めた「会社の憲法」ともいえる重要な書類です。会社を設立する際には、この定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款に事業目的を記載する主な理由は以下の通りです。
- 会社の活動範囲の明確化: 定款に記載された事業目的は、会社がどのような事業活動を行うのかを外部に示す役割があります。これにより、株主や債権者、取引先などが会社の事業内容を把握できます。
- 絶対的記載事項: 会社法により、事業目的は定款に必ず記載しなければならない事項と定められています。記載がなければ定款が無効となり、会社を設立できません。
定款に記載する事業目的は、将来的な事業展開も考慮し、ある程度の網羅性を持たせることが重要です。ただし、あまりに広範すぎたり、漠然とした記載にすると、後述する登記申請や許認可、融資などに悪影響を及ぼす可能性もあります。
登記申請における事業目的
定款認証が完了したら、法務局で会社設立の登記申請を行います。この登記申請書にも、定款に記載した事業目的をそのまま転記して提出します。
登記申請における事業目的の役割は以下の通りです。
- 登記事項としての公示: 登記された事業目的は、会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)に記載され、誰でも閲覧できるようになります。これにより、会社の事業内容が公に証明されます。
- 適法性の確認: 登記官は、申請された事業目的が適法であるか、公序良俗に反していないかなどを確認します。違法な目的や、会社が営むことができないと判断される事業目的は登記できません。
登記申請の際には、定款に記載した事業目的と、実際に登記申請書に記載する事業目的が一致しているか、誤字脱字がないかなどを厳重に確認する必要があります。もし登記後に事業目的を変更したい場合は、別途変更登記の手続きが必要となり、費用と手間がかかります。
このように、事業目的は定款作成から登記申請まで一貫して重要な役割を担います。そのため、会社設立の初期段階で慎重に検討し、適切な内容を定めることが、その後の事業運営をスムーズに進める上で不可欠となります。
事業目的が原因で起こりうるリスク
事業目的は、会社の活動範囲を定める重要な項目です。そのため、事業目的の記載が不適切だと、予期せぬリスクに直面する可能性があります。ここでは、事業目的が原因で起こりうる主なリスクについて解説します。
目的外行為とは?
「目的外行為」とは、会社が定款に記載された事業目的の範囲外の行為を行うことを指します。例えば、「飲食店の経営」を事業目的としている会社が、突如として不動産投資を主たる事業として始めた場合などがこれに該当します。
会社法上、会社は定款の事業目的の範囲内で活動することが求められており、目的外行為を行うことは原則として許されていません。もし目的外行為を行った場合、会社の代表者が株主や債権者から責任を追及される可能性があり、最悪の場合、損害賠償請求に発展することもあります。将来的な事業展開を見据え、関連性の高い事業目的を網羅的に記載しておくことが、このようなリスクを回避するために重要です。
融資審査への影響
金融機関から融資を受ける際、事業目的は審査において重要な判断材料の一つとなります。事業計画書の内容と定款に記載された事業目的が合致していない場合や、事業目的が不明確で会社の事業内容が読み取れない場合、金融機関は「この会社は何をする会社なのか」「本当に事業計画通りの事業を行うのか」といった疑問を抱き、融資に消極的になる可能性があります。
特に、創業融資など実績が少ない段階での融資では、事業目的が会社の信頼性や事業の実現可能性を測る指標となるため、具体性があり、かつ事業計画と整合性の取れた事業目的を記載することが不可欠です。
許認可取得への影響
特定の事業を行うためには、国や地方自治体から「許認可」を得る必要があります。例えば、建設業、運送業、飲食業、宅地建物取引業など、多くの事業がこれに該当します。これらの許認可を申請する際には、会社の定款にその事業を営む旨の事業目的が明記されていることが必須条件となるケースがほとんどです。
もし必要な事業目的が記載されていなかったり、曖昧な表現であったりすると、許認可の申請が却下されたり、取得までに余計な時間や手間がかかったりするリスクがあります。事業を始める前に、必要な許認可とそれに伴う事業目的の記載要件を事前に確認し、漏れなく定款に盛り込むことが重要です。
事業目的の変更方法
事業目的は一度定款に記載し登記すると、原則として簡単に変更できません。しかし、会社の成長や事業環境の変化に伴い、新たな事業を開始したり、既存の事業内容を調整したりする必要が生じることもあります。そのような場合、事業目的の変更手続きを行うことになります。
事業目的を変更するには、株主総会での特別決議が必要です。特別決議とは、議決権を持つ株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得て可決される決議のことです。この決議を経て、定款の内容を変更し、法務局で変更登記を申請する必要があります。
具体的な手続きは以下の通りです。
- 株主総会の招集・開催: 事業目的変更の議案を付議事項とした株主総会を招集し、開催します。
- 特別決議: 株主総会で、事業目的の変更について特別決議を行います。
- 定款の変更: 特別決議に基づき、定款の事業目的の条項を変更します。
- 変更登記の申請: 変更後の定款と株主総会議事録などを添付し、法務局へ変更登記を申請します。登記申請は、変更決議の日から2週間以内に行う必要があります。
この手続きには、司法書士への依頼費用や登録免許税などの費用が発生します。また、許認可が必要な事業目的を追加する場合は、変更登記後に改めて許認可申請を行う必要があります。将来的な変更の可能性も考慮し、会社設立時にできるだけ網羅的な事業目的を設定しておくことが、余計な手間やコストを削減する上で重要となります。

よくある質問(Q&A)
会社設立時の事業目的について、多くの方が疑問に感じる点をQ&A形式でまとめました。あなたの疑問解消の一助となれば幸いです。
Q1. 事業目的はいくつまで記載できますか?
A1. 事業目的の数に法的な制限はありません。しかし、あまりにも多くの事業目的を記載すると、会社の活動内容が不明確になり、外部からの信用を得にくくなる可能性があります。一般的には5〜15個程度に収めるのが適切とされています。事業の核となるものや将来的に展開する可能性のあるものを厳選して記載しましょう。
Q2. 目的外行為を行うとどうなりますか?
A2. 定款に記載されていない事業を行うことは「目的外行為」とみなされます。目的外行為自体が直ちに違法となるわけではありませんが、会社の代表者がその行為によって損害を与えた場合、会社や代表者個人の責任が問われる可能性があります。また、融資や許認可の審査において不利になることもあります。
Q3. 事業目的は途中で変更できますか?
A3. はい、事業目的は会社の状況に合わせて変更することが可能です。変更には株主総会の特別決議が必要となり、その後、法務局での変更登記申請が必要です。変更手続きには費用と手間がかかるため、設立時に将来を見据えた設定をすることが重要です。
Q4. 許認可が必要な事業の場合、事業目的の記載に注意点はありますか?
A4. 許認可が必要な事業(建設業、宅建業、飲食業など)を営む場合は、その許認可の要件を満たすような具体的な事業目的を記載する必要があります。曖昧な表現では許認可が下りない可能性があるため、事前に管轄官庁や専門家(行政書士など)に確認し、適切な表現を盛り込むようにしましょう。
Q5. 融資や資金調達に事業目的は影響しますか?
A5. はい、大きく影響します。金融機関は融資の際、会社の事業計画と定款の事業目的を照合し、事業の実現可能性や信頼性を評価します。事業目的が広範すぎたり、逆に狭すぎて事業計画と乖離があったりすると、融資担当者に不信感を与え、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。具体性があり、かつ将来性を見据えた事業目的を記載することが重要です。
まとめ:事業目的をしっかり設定して、会社設立を成功させよう
この記事では、会社設立における事業目的の重要性から、正しい書き方、具体的な例文、そして設定する上での注意点やリスク、変更方法に至るまでを詳しく解説しました。
事業目的は単なる形式的な記載事項ではなく、会社の顔であり、将来の事業展開を左右する羅針盤となる重要な要素です。曖昧な表現や網羅性に欠ける記載は、後々のトラブルや事業機会の損失につながる可能性があります。しかし、この記事で解説したポイントを理解し、網羅性、具体性、そして将来性を見据えた事業目的を設定することで、あなたのビジネスはより強固な基盤の上に立つことができるでしょう。
会社設立という人生の一大イベントにおいて、事業目的の設定はあなたのビジネスの未来を形作る最初のステップです。この記事が、あなたが自信を持って会社を設立し、事業を成功させるための一助となれば幸いです。